畠山地平: 内側にいると日本のアンビエントミュージックが特殊だとは思えないのですが

Chihei Hatakeyama

畠山地平

(For the English version click HERE.)

How did you first get in touch with music? What inspired you to start experiencing with music?

最初は両親の車の中で流れている音楽に興味を持ちました。The Beatlesが流れていました。高校生の時にバンドとギター始め、Metallica、Slayerなどのスラッシュメタルのコピーバンドで演奏していました。その後大学生の時に、Mixmaster MorrisのアンビエントのDJを観に行く機会があって、そこでアンビエントミュージックに出会いました。97年頃の話です。そしてアンビエントミュージックやTortoiseや、Jim O’Rourkeのポストロック、70年代のCanやNEU! 等の、ジャーマンロックに影響を受けた即興のロックバンドを結成してライブ活動を始めました。このバンドでもギターでアンビエント的なアプローチはしていました。しかし2年くらいでそのバンドを脱退して、2001年頃から一人で音楽を作るようになりました。始めはサンプラーと古いYAMAHAのシーケンサーを使っていたのですが、その後power bookを購入してMax/Mspなども始めました。2002年にはopitopeのtomoyosiと出会って一緒に音楽を作るようになりました。

Japanese ambient music is considered to be special to an almost irreproducible point. What do you think it makes it so different, so ‘authentic Japanese’?

内側にいると日本のアンビエントミュージックが特殊だとは思えないのですが、日本の文化的特色や日本庭園や茶道の思想などから意識しないレベルでの幼い頃からの影響というものはあるかもしれません。しかし多くの日本人にもっとアンビエントミュージックが受け入れられてもいいような気もしますが、実際にはごく小さい規模です。John Cageにも日本の禅は影響を与えましたが、日本人からみると、ちょっとした誤解も混じっているかもしれません。日本の歴史を振り返ると、西暦1600年に徳川幕府が成立したのが大きいように思います。これを境に日本の思想は戦争をしなくなった職業戦士の武士が担うですが、この存在的な捻れが今の日本の文化の美学のベースを形成しているような気もします。

How is the ambient music scene in Tokyo? There must be something going on all the time…

東京のアンビエントシーンは年々広がっているような気もしますし、変わっていないような気もします。ライブイベントは通常のライブハウスなどで開催するよりも、お寺や教会、野外などで開催する方がお客さんは集まるようです。オーディエンスは音楽と音楽を聴く特殊な環境を体験したいのだと思います。また小さい数人から十数人のイベントも多く開催されています。また、celerや、Jim O’Rourkeなど、海外から東京に引っ越してくるミュージシャンもいて、それが東京のシーンに深みを与えてくれています。しかし最近はますます細分化が進んでいて、同じようなアンビエントミュージックでも別のコミュニティにはまったく情報が伝わっていなかったりします。これは音楽だけの問題ではないと思いますが。。

In 2010 you’ve launched your own label White Paddy Mountain and started out with releasing your own albums at first, but then recently you also gave space to such artists as Shelling, Asuna or Machinefabriek. How did you get the idea to set up your own label for your own music, then how come you have decided to let others ‘join’ as well?

始めは、opitopのtomoyoshiとレーベルを始める計画がありました。それが2008年頃です。White Paddy Mountainからリリースしているopitopeのアルバムをリリースするためです。それが中々進まず、頓挫していました。その後、別の友人とNYAMMAというレーベルを始めましたが、こちらはK’DLOKKという少し変わったアヴァンギャルドポップのカールズユニットをリリースしました。2010年の事です。NYAMMAもこの1枚で止まってしまって、その後White Paddy Mountainを立ち上げる事にしました、始めはデジタルだけのレーベルでしたが、ShellingのCDリリースをきっかけにCDのリリースを始めました。他のアーティストのリリースを決める作業は難しいですが、世の中に流通させたいと思える作品を選ぶことにしています。その中で日本の市場がメインなので、日本のアーティストが必然的に多くなります。しかし日本のアーティストを海外に紹介したいという気持ちがあるので、今後そこを伸ばしていく事が課題でもあります。

What is your experience of releasing music from Japan? Do you find it harder to get noticed/heard due to the geographic/language barrier?

言語的な壁はいつも感じています。私だけでなく、他の日本人ミュージシャンも感じていると思います。また地理的な壁の方が大きいと思う事もあります、もっと頻繁にツアーなどに行ければ良いのですが。

How do you achieve that immense level of calmness in your music? Do you have any rituals or methods that help you compose?

ミックスダウンの作業で納得のいくレベルまで仕上げます。何度も聞き直すようにしています。また作業して少し時間を置く事にしています。2〜3日後に聞き直すと作業していた時は良かったと思ったものが良くなかったりします。ミックスの作業で、音の入れ替えなどを行っている中で、最初に使っていた音がまったく無くなってしまって別の曲になってる事も多々あります。作曲のためのメソッドは何パターンかあります。ギターの即興、シンセの即興、その他の楽器の即興。それらをストックしておき、ソフトを使ってプロセッシングする事もあれば、ルーパーペダルとギター用のペダルエフェクター、ミキサーで加工する事もあります。また波形編集ソフトを使って、ファイルのピッチの調整などをします。ピッチの調整は奥が深く、ソフトによって、強調される倍音が違うようで、これにリバーブやディレイを加える事で、かなり変化させる事が出来ます。

Unlike Tomoyoshi Date – your partner in Opitope – you prefer working alone, concentrating on your solo material. Is there any specific reason why you haven’t been involved in too many collaborations?

Tomoyoshiは本当にセッションが大好きなので、コラボーションのアルバムリリースが多いのでしょう。opitoepでもリリースしていない膨大な量の録音があります。編集が大変で、今ではハードディスクの奥に眠ってます。少し前まではこの膨大なセッションからアルバムを作ろうという気持ちもありましたが、今は無くなりました。今の自分の音楽にこれらの経験が生きているという事で良いと思っています。
私の方は自分の音を探求したい気持ちの方が強かったので、コラボレーションは少ないですが、今後多くなると思います。また他の理由としては、自分の音楽のあり方に影響を与えているのは、絵画であったり、小説であったりするので、個人的な作業が好きなのかもしれません。

You’ve amassed a huge discography in a relatively short period of time, are you concerned about releases going unnoticed due to your high productivity level?

リリースが多いのは気にしていますが、一作品作るとまた次のアイデアが思いつきます。
今後はもしかしたら、別の名義を使う、シリーズ化していくなど、少し発表のやり方を考えてもいいかもしれません。

Do you ever listen to your old releases, if so do you still enjoy them?

自分の作品は作業中に何度も聞いているので、リリースした後は聞く事はほとんどないのですが、たまに確認のために聞き直す事があります。自分の作品を聞き直すのは少し辛い作業です。過去の自分の亡霊が突然表れたような気になってしまって、戸惑います。最近マスタリングやレーベルの仕事などが忙しく、音楽を作る時間が減っています。その中で時に音楽制作、作曲に向き合える時間が貴重で、幸せな時間でもあります。
改めて思うのは音楽を作っている過程が好きなんですね。だんだんと変化し、形になっていく様が面白く、作曲者ではあるのですが、同時に観察者でもあると思っています。

Your music has evolved a great deal over the years, yet you’ve always maintained a strong aesthetic which is very much your own, where do you see it going next?

最近はいつも複数の作品を並行的に作っていますが、現在作っているいくつかの作品を仕上げた後は1枚ずつ作るスタイルに戻したいと思います。なぜそういう事になったのか考えると、やはり3.11の東日本大震災が大きかったと思います。あの日自分は古いビルの8階にある本屋に居たのですが、突然ビルが大きく揺れ始め、気付いた時には、階段を駆け下りていました。その後、新宿にある公共の大きなテレビモニターで、大勢の避難してきた人と供に、リアルタイムで津波に流される人や建物をみたのですが、何も出来ない自分を対比して辛い気持ちになりましたし、その後に起きた原子力発電所の事故でさらに追い打ちをかけられました。今思うに、その後2年くらいはやはり平常な心持ちではなかったように思います。今は時間も経過し、心の整理も着いているので、3.11の直後に作った作品などを点検し直してリリースに向けて作業しているところです。またトルコに旅行に3年前に行き、そこで録音してきたフィールドレコーディングの素材を使ったアルバムを作っている途中なのですが、それも仕上げたいと思っています。その後は何か新しい形、ドローンを使った何か新しいものが出来ないか探求したいと思っています。時間があれば音楽でけでなく、映像または、音と光を使った何かが出来ないかじっくり考えたいと思っています。

What is it about ambient music that keeps you so engaged and committed to it?

とても深い質問ですね。これについてはいくらでも話せそうですか。これについて最近面白いなと思ったのはDavid toopのトークショーで、彼は『アンビエントミュージックはBrian Enoが始めた事になっているが、私は違うという事を知っている』というような事を発言していてとても面白いと思いました。Brian Enoに関しては、アンビエント・ミュージックを始める前の”Obscure Label”の活動が興味深いですね。現代音楽をどうにか、聞きやすいものにしようという意図があるように思えますし、とてもいいアルバムありますし、今聞くとコンセプトが先走りしすぎているアルバムもありますね。また、自分はBrian EnoのApolloというアルバムがとても好きなのですが、このアルバム自体は既にイーノが提唱しているアンビエントミュージックからは離れてしまっているようなところがあると思っていて、そこが面白いですね。アンビエントミュージックという概念の発生には、70年代中期の現代音楽、即興音楽などのシーンが影響を与えていると考えていて、そのあたりの状況はとても興味深いです。アンビエントミュージックという概念はいくらでも応用可能ですが、今はなんでもそう言ってしまおうという機運が少し日本ではあるようで、それもいいのかもしれませんが、多少違和感もありますし、誤解が広まっていくような気がしています。アンビエントミュージックはHiphopやReggae,blus,Metal Noise etc.. などのジャンルという概念とはまた違っていて、Hiphopの中でもアンビエント的な解釈が出来る曲もありますし、Reggaeや、民族音楽でも同様です。つまりアンビエントミュージックはジャンルではないと思っています。どこにでもあるというのが、アンビエントミュージックの一番面白いところだと思います。なので、ある意味アンビエントミュージックというジャンルは無いと解釈する事も可能ではないかと考えています。作曲者としては、アンビエントミュージックを作ろうという意識は持たないように注意しています。

Winter came early this year with releasing your new album ‘Winter Storm’ in September. You were inspired by quite various aspects this time: your everyday life, world history and a heavy snow storm that hit Tokyo last year. How are all these things coming together to form a perfect whole? How did this heavy snow storm affect you when it happened?

アルバム『Winter Storm』では、ギターのルーパー・ペダルを多く使いました。この奏法に慣れてきた時に、ちょうど東京に大雪の嵐が来たのですが、外に出れなくなり、その嵐の音を聞きながら録音したのが、4曲目に収められているWinter Stormという曲です。1曲目の”Don’t Ask What”は東京の代官山にあったアンビエントや電子音楽を扱うmurmur recordsというレコード屋さんの閉店パーティーのために作曲された曲です。このアルバムに収められた4曲は全て、2013年〜2013年の冬に作曲された曲です。日記的な意味もあり、また以前から冬をテーマにしたアルバムを作りたく思っていたところ、この4曲がはまったという事です。この期間にこの曲だけ作っていた訳ではなく他にも作曲していたのですが、この4曲が何か象徴しているような気がしたので、このような形になりました。

Who do you think the most impressive ambient artists are these days? Explain why you like them.

ken ikedaさんです。 彼はDX7などによる純正律、また自作のノイズ楽器などを使ってアンビエントミュージックを作っていますが、その真摯な姿勢は見習うべきところが多いです。非常に複雑で高度な音楽を作っているのですが、理解しづらいところもあって誤解されていることが多いかもしれません。

When you’re not working with and listening to ambient, what other types of music do you prefer, what other artists do you like?

古い録音の民族音楽などもよく聞きます。ネパールの炭坑労働者の歌や、東南アジア、インド、アフリカなどです。また即興音楽、実験音楽、古い電子音楽、フィールドレコーディングなどを聞きます。歌が入っているものは女性ヴォーカルが多いです。最近ではVashti Bunyanの新しいアルバムや、Josephine Foster, Grouperが好きです。古い歌ものだと、ブラジル音楽のLo Borgesや、Alice Coltraneの後期が好きです。Alice Coltraneはシンセサイザーとゴスペル、ジャズ、スピリチュアルが混ざっているのでとてもよいですし、メロディが美しいですね。しかも後期はカセットでしかリリースされていなく、手に入れる事ができなかったので、youtubeからアナログで自分のマスタリングシテムに入れて、個人的に再マスタリングをして楽しんでいます。ごく最近はエリックサティのピアノ曲にはまっています。ピアノ前週を少しずつ集めていて、また新たな発見があるというのが、サティのすごさですね。またboomkatで売っているようなエクセペリメンタルなミニマルテクノやビートものに最近はまってしまっていて、これらも名前をあげるときりがないですが、いいものが多いですね。

If you would have to choose, what would you pick as your favourite album cover?

Phill Niblockの『Touch Works, For Hurdy Gurdy And Voice 』の写真が好きです。
どこか異国の労働者の後ろ姿が情緒がある。一見音楽と関係なさそうだけど、何か繋がっている感じがいいと思う。

Phill Niblock: Touch Works, For Hurdy Gurdy And Voice

Who would you like to read an interview with on Sounds Of A Tired City?

Stephan Mathieu

 

MIX by CHIHEI HATAKEYAMA

 

MORE on CHIHEI HATAKEYAMA

Website

Facebook

Twitter

Bandcamp

Soundcloud

Tumblr

Discogs

Last.Fm

 


Thoughts?

Your email address will not be published. Required fields are marked *